Making process of 【朝露】音作り編 そのⅡ

楽曲制作

 前回は、ドラムの音作りまでだったので、今回は残りの楽器の音作りを進めていきます。

ギターの音作り

 ギターのコードパートは、ライン録りだったので、なんの音作りもされていません。そこで、曲に収まるように何らかのエフェクトをかけたい所です。よく聞いてみると、ギターはハイハットの刻み方と、ほぼ同じタイミングできざんでいるので、両者がバッティングしていて聞きづらくなっています。シンバルともタイミング的にバッティングしていますが、こっちは周波数の帯域が違うせいか、それほど耳障りではありません。

 このバッティングを解消するのに、コンプレッサーでタイミングをずらそうかとも思いましたが、ほとんど効果はないようです。そこで、コーラス、フランジャーなどの音を揺らす系統のエフェクターをかけてみたところ、フェイザーがこの場合の目的には、いちばん収まりがよいと思いました。

 使ったプラグインは、足で踏むタイプのコンパクトエフェクターを模したタイプのものです。シンクボタンがついていて、それをオンにするとテンポとマッチングするようです。聞いたところカッコ悪かったのでシンクはオフにしました。このフェイザーをかけると、ハイハットが、かすれる事がなく、聞き取れるようになりました。それでは、ギターにフェイザーをかけた音源を載せておきます。

【朝露】ギター

ベースの音作り

 ベースもギターと同じく、ライン録りです。アクティブタイプのベースですが、ハムノイズが乗ることをきらって、フロントのハムバッキングのピックアップを主に使いました。ハムノイズはほとんど乗らなかったのですが、シングルコイル特有のアタック感には、程遠い音です。そこで、アンプシュミレーターを使って、アタックを出そうかとも思いましたが、ノイズが乗るだけの気がしたので、とりあえず、このハムバッキングの音でいくことにしました。音がすこしボワっとダブついている感があったので、イコライザーで無駄な音域を削って音を少し細くしてから、コンプを軽くかけて、頭のアタックを少しだけ、持ち上げています。これで、まわりの音がすこし通るようになった気がします。特にギターのフェイザーをかけたコード弾きが聞き取りやすくなりました。よく、ギターとベースは音的に密接に関係しているというミキサーの人がいますが、こういう意味なのかもしれません。それでは、ベースを修正した音源を載せておきます。

【朝露】ベース

ウワモノの音作り

ピアノの音作り

 ピアノのトラックは、もともとMIDIのソフト音源を、オーディオデータに書き出したものです。そこで、曲の部分、つまり「Aメロ」とか「サビ」といったパートの違いによってついている音量差を波形編集によってならしておきます。波形上で音量を上げ下げしても、もとがソフト音源だったので、ノイズが増える可能性はほとんど無いです。

 音量の差がある程度解消できたら、イコライザーで、無駄な帯域を削ってから、コンプレッサーで少し音圧を上げてやります。なぜ、音圧を上げるかというと、ベースの音と溶け込みすぎていて、あまり存在が感じられない音になっています。こういったことから、コンプレッサーで音圧を上げてみましたが、やはり、あまり聞こえてはこないようです。トラック単体で聞くと、まるで、ローズピアノをフェンダーのツインリバーブに通したような音になっていますが、全体で聞くと、あまり聞こえてはきません。溶け込ませるか、浮き立たせるか、音色選びの難しいところです。

シンセパッドの音作り

 シンセパッドは、ソフト音源からオーディオデータに書き出す時点で、音色はほとんど決まっていたので、あとは無駄な帯域を削って、さらに薄い音にしていきます。なぜもっと薄くしていくかというと、これから、リバーブなどで、音をたしていったときに、音がぶつかり過ぎないようにしておきます。

ハイハットとシンバルの修正

 ハイハットとシンバルについては、前回のドラムの音作りのなかでも、手を入れていますが、まわりの音が整理されて行くにつれて、じょじょに違和感がでてきました。そこで、今度はコンプレッサーによって、全体になじませるようにしてみます。もともとの音は、楽器からの距離が5センチ位の所に立てたマイクで録音しているので、アタックがキツイ音になっています。そこでコンプレッサーは音の頭の部分の強調というよりは、いかに余韻をきかせるか、音を伸ばすかといった使い方をします。コンプレッサーのリリースを短めにすると、圧縮している時間が短くなるので、たいていは音を伸ばすためのセッティングとなります。このようにしてコンプをかけたあとでも、まだ音が浮いているようなら、前回のように、非常に短いリバーブをかけて、音に距離感を出します。

スネアドラムの修正

 スネアドラムも前回、音作りをしましたが、今回はコンプレッサー中心に音作りしてみます。最初に音を少し細くするために、イコライザーで無駄な帯域を削ります。そのあとで、スネアもコンプレッサーで、ハイハット等と同じように、余韻を伸ばすセッティングをしてやります。このセッティングが効果的だったのは、スネアの下側、つまりは響線(スナッピー)がある側のマイクで収録したトラックにコンプレッサーをかけた時でした。まるで、スナッピーが後ろに側に飛んでいくような音になりました。

ウワモノ修正音源

 それでは、これまで書いてきたウワモノの音作りを終えた音源を載せておきます。

【朝露】ウワモノ

低音域の修正

 格トラックを修正して、ある程度、音がまとまってくると、低音域、つまり、バスドラとベースの関係が気になってきました。つまり、バスドラとベースの音質が微妙に、あっていない気がします。たぶん、両方のトラックの音程感があっていないためだと思います。

 以前、バンドで貸しスタジオで練習しているときに、ベースとバスドラがいまひとつ、しっくりこないときに、ベーシストにベースアンプのトーンを回してもらって、調整したことがありました。ベースとバスドラがあったと感じるところまで、トーンの調整ができると、ドラムをたたいていて、非常に気持ちのいい音になったことがありました。

 バスドラムとベースの音を合わせるために、今回はベースアンプはないので、バスドラにコンプレッサーをかけての音色の変化をねらって見ましたが、これではほとんど、無理のようです。そこで、低音域の補正に使われる「サブハーモニック・シンセサイザー」的なエフェクターをかけてみることにしました。このエフェクターは、簡単に言うと、「もとの音源から低音域の音を人工的に作り出して加える」働きをするものです。わかりやすい例としては、「オクターバー」というペダルタイプのコンパクトエフェクターがあります。ジェフ・ベックというレジェンドのギタリストがたまに使っていた、原音の1オクターブ下で「ウニュー」といった音で鳴っていたものです。聞き覚えのあるかたがいるかもしれません。このエフェクターの本格的なものと思っても、あながち、間違いではないと思います。

 この「サブハーモニック・シンセサイザー」ですがプラグインとしては、「マックス・ベース」とか「ルネッサンス・ベース」とかメーカーによって異なった呼び方をされていますが、低音を作り出して加えるという意味では、同じような働きをするようです。

 今回は、ベースとバスドラのマッチングを取るために使うので、バスドラにかけて新たな低音域を加えてみることにします。つまりは、

「元のバスドラ」+「仮想バスドラ」=「ベース」

という形で、「元のバスドラ」に「新しく作るバスドラ」の周波数を調整してぶつけることによって、「ベース」の音と合わせようという考え方です。最初は、「元のバスドラ」に直接エフェクトをかけて調整し、最後に「もとのバスドラ」と合わせると、合わなくなるという失敗をしました。そこで、初めに「元のバスドラ」をトラックごとコピペしておいてから、「仮想バスドラ」の周波数を合わせたほうがいいようです。この周波数合わせは、ギターチューナーのように正解を示してくれるものはなく、耳だけがたよりとなる作業ですが、日頃、ギターやベースのチューニングをしている人なら感覚的に、あった合わないを感じることができるのではないかと思います。

 それでは、最後にベースとバスドラを合わせた音源を載せておきますが、低音域がスッキリした感じがします。あと、バスドラが結果的にダブルトラックになったので、音量が少し増えて、前よりは聞こえるようになってきました。

【朝露】低音域

 

 

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