「弾き語り」音源を「バンド」音源化

楽曲制作

 作曲をする時に、ピアノやギターで弾き語りをしながら、曲を作る方も多いとおもいます。また、厳密には弾き語りではなくても、DAWのトラック上でキーボード(鍵盤)を弾きながら、メロディーを作る人は、とても多いと思います。そこで今回は、このように「弾き語り」を主体として作った音源を、どのようにして「バンド」音源化するかを、考えてみたいと思います。

「弾き語り」音源の状態確認

 弾き語りの音源が、どのような状態にあるかで、準備の難易度が変わりますので、その点を確認していきます。

制作用DAW上にある

 弾き語り音源をバンド音源化するときに、一番都合がいいのは、すでに制作用DAW上のトラックに、ギターかピアノのコード楽器と、歌がはいっているトラックの二つが並んでいる状態です。つまり、普段、制作用のDAWで曲を作っている人にとっては、ごく自然な状態です。これなら、とくに準備は必要なく、制作に移れます。

作曲用DAW上にあるが、制作用DAW上にはない

 これは、つまり作曲用と制作用のDAWが違う人の場合です。私がまさに、このタイプですが、作曲用のデスク周りの環境と、制作用の使いやすい環境が違うことから、それぞれの使いやす考えると両立しなくなり、分離したケースです。ここで注意したいのは、DAWの種類、バージョンの違いです。ですが、もしも互換性の点で、DAWの読み込み時にトラブルが発生しても、歌とコードの2トラックを頭から書き出せばすむ話なので、それほどの手間にはならないと思います。

 あと、MIDIキーボードで、コードのトラックを作っている場合は、互換性の高いスタンダードMIDIファイルを使って移行します。残った歌のトラックについては、曲の頭からWAVEファイル(WINの場合)で書き出して、移行先のDAWのオーディオトラックに貼り付けてやります。

音源がDAW上(PC上)に無い場合

 作曲をするときにDAWを使わない場合や、過去の作品などで、カセット、MDなどに録音していた場合は、これまでのケースと違い、多少時間がかかってしまします。

 コード譜などが残っているときは、そのコードと過去の音源を参考にして、移行は考えずに、DAWに直接録音していくのが手っ取り早いと思います。コード譜が残っていないときは、過去のMDなどの音源を直接DAWに録音してしまい、それを参考にしながら、テンポを決定したり、コードを割り出しながら、コードトラックとメロトラックを録音(入力)していきます。

「弾き語り」音源のアレンジ

 なんとか、DAW上に2トラックが用意できたら、その2トラックを聞きながら、バンドの編成などを考えていきます。そのときに、注目することとしては、その2トラックが、曲として成立しているかどうかという点です。2トラックでも、曲として聞こえる場合は、トリオ編成とか、最小限の編成のバンドアレンジが狙えます。反対に、2トラックでは、曲として聞こえないときには、4リズムの編成にさらに何らかのパートを加える必要があるかもしれません。
 以下が今回、バンド化しようとする弾き語り音源です。ギターソロを入れると、厳密には3トラックになるのかもしれませんが、ギターソロも歌もメロディートラックにあたるので、実質的には、2トラックと考えていいと思います。

【街灯の先へ】(弾き語り)

 聞いてみた感じでは、これでも曲といえなくも無い状態と思いました。そこで、思い切ってバンドとしては最小編成となる3人組、つまり3ピースバンドの編成で考えてみます。

ドラムとベースのオーバーダビング

 トリオ編成のプランが決まったので、ドラムのダビングから始めます。この場合のドラムは、3ピースバンドで、コード楽器はピアノだけということもあり、普段よりも、リッチな音場が望めます。つまり、トップマイクオーバーヘッド)という、ドラムセットを上から狙うマイクを2本にして、ステレオ化するとか、トップマイクを一本にして、ステレオイメージャーなどステレオ化するプラグインで、残響を後ろに流すような、マイクアレンジが可能になります。今回は、普段のマイクに加えてクラッシュシンバル専用のマイクをたして、計7本のマイクで録音しました。
 これで、ドラムをダビングしたので、ベースに移りたいところですが、聞き返してみると、ピアノのタイム感に、ドラムとの違和感がありました。これは、ドラムのバスドラが16分音符で踏んでいるため、ピアノのベタッとした弾き方と合わなくなったのだと思います。この違和感に耐えられなかったので、すぐに、ドラムと歌メロを聴きながら、ピアノを録りなおしました。
 これでやっと、ベースのダビングに移りましたが、普通に弾くと、曲と合わない感じがしました。ピアノが切気味の弾き方になったので、ベースも普通に弾くと、曲として成り立たない感じです。そこで、ベースは音符いっぱいに伸ばした、引きずるような弾き方(テヌート奏法)をしたら、なんとかなりそうです。3ピースバンドのベースは、じつはバランスをとるのが大変だと思いました。テクニック的な意味でなく、弾き方という意味で。そういえば、3ピースバンドのベースの方は、やつれた感じの方が多い気がします(笑)。
 ついでに、歌のなかで、歌詞が変なところを直しておきます。あと、ハモを1パート、付け加えます。あまりハモり過ぎると、3ピースバンドではなくなるので注意します。ここでは、ピアノとベースがハモっているという仮定にします。バックとのバランスを考えると、ハモは2声で十分でしょう。

ミックスダウン

 ミックスダウンを、始める前には、ドラムとピアノがステレオ音源なので、どっちを外に広げるかといったことが問題になると思っていましたが、実際はそういう問題ではなかったです。トリオ編成では、コード楽器が、ひとつしかないので、それをどう聞かせるかということが、重要なようです。つまり、この場合はピアノがコード楽器なので、右手と左手の音量のバランス、音質、定位する位置、といったことが問題になります。ステレオイメージャーWAVESのS1などで、ステレオ感をコントロールします。そのあと左右の音量が個別に変えられるような2チャンネル仕様のイコライザーで調整します。そうやって、右手のコードの刻みと左手のバス音が、ドラムの隙間から抜けてくるように調整します。
 ドラムは、トップマイクを1本で録音したので、それを真ん中に定位します。そのトラックの残響と広がりを出すために、ステレオイメージャー等とコンボリバーブの組み合わせで、右から左に残響音が流れるような設定をします。そのままだと、ドラム音の残響が横に流れるので、さすがに変な感じです。そこで、さっきのトラックをそのままマルッとコピーして、ステレオイメージャーやS1に、左右を反転するスイッチがあるので、それで左右をいれかえます。この2トラックの残響を組み合わせると、残響音の流れはなくなり、自然で広がりのあるドラムトラックになります。それでは、ミックスをMp3に書き出したので聞いてみてください。

♪【街灯の先へ】

まとめ

 三人組のミックスは、音数が少ないので、楽だろうと思っていましたが、そうではなかったです。4リズム以上の普通のバンドのミックスとは、気を使うポイントも違うような気がします。アーティストというより、どちらかといえば、職人的な技が映える分野と思いました。そういえば、三人組バンド、ジミーヘンドリックス・エクスペリエンスでレコーディング、ミキシングを担当していたエディー・クレイマーがジミヘン第四のメンバーと呼ばれていたのも、彼の果たした役割がじつは大きかったという表れかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました