前回までの記事で、大体のオーディオトラックが出揃いました。あとは、これにシンセパッドのトラックを加えてから、ドラムトラックの音作りに入っていきます。
シンセパッドの追加
前回までの音源を、改めて聞きなおした所、曲にパートごとの強弱の起伏が足りないような気がしました。そこで、メリハリをつけるためにシンセパッドを加えていくことにします。特にシンセパッドでなければという理由はなく、ストリングスを加えてもいいと思います。私の場合は、ストリングスを使うタイプのアーティストをあまり聞いてこなかったこともあり、ストリングスを加えることはあまりしません。
そこで改めて、「他の人はどうしているのか」と、ストリングスとシンセパッドの比率に注目して聞いてみました。日本の楽曲を聞きなおしてみると意外なほど、ストリングスが多用されていることに気付きます。その理由を今、簡単に考えてみると、日本人のアレンジャーがコーラスワークによって曲に厚みを出すことをあまり、してこなかったような気がします。その点、欧米(特にアメリカ)のアレンジャーは、コーラスワークの厚みを補う形でシンセパッドを多用してきたように思います。
それでは、シンセパッドの特徴を書いてみると、
- フワッとした音色で空間を埋める。
- キーボードと関連性のある音色にして広がりをだす。
- オープンボイシングを多用する。
- かく声部はそれほど動かさなくていい。
そういった事から、簡単なシンセパッドの作り方としては、キーボードのパートのトラックを、そのまま他のトラックにコピペします。それから、そのトラックのかく声部を開離配置、つまり、オープンボイシングに直してやれば、済みそうです。この方法でシンセパッドを加えた音源を載せておきます。いわゆるAメロと呼ばれる部分は、あえて、シンセパッドを入れず、音数を減らして対比を出しています。
素材の書き出し
シンセパッドを加えたことにより、曲の音源が一応出揃った気がするので、ここで一旦、かくトラックの書き出しに入ります。
MIDIソフト音源の書き出し
各トラックを書き出す前に必要となるのが、MIDI音源のオーディオファイル化です。なぜ、この作業が必要かというと、このフォルダをそのまま保存すると、他のDAWなどで読み込むときに、同じソフト音源が入っているとは限らないので、音色の再現ができなくなってしまいます。
この曲の場合のMIDI音源は、エレピのパートとシンセパッドの2つです。書き出す前に、ソフト音源付属のエフェクターや、音源のアウトにプラグインのエフェクターをさして音の最終調整をします。ここで気をつけることは、オーディオ用のプラグインをソフト音源の出口にさすと、いつもより簡単に音が割れてしまうということです。オーディオファイルに使う時には、絶対に音が割れないという触れ込みの「ラウドネスマキシマイザー」でもこの使い方をすると、なぜか簡単に音が割れてしまいます。
各トラックを曲の頭から書き出す
これで、曲の素材が全トラック分でそろったので、各トラックを曲の頭から書き出していきます。なぜこんな面倒なことをするかというと、簡単にいうとトラブルを避けるためです。たとえば考えられるケースについて挙げてみると、
- 異なるDAWでミックスする場合、OMFファイルが頼りにならない
- 何年後かに、同じDAWでもバージョン違いで読み込めない
- ミックスを他人に依頼する場合、安心できる
- 何年後かに、上達した音作りでやりなおせる
- このあと、ミックスを進める時に、音作りのミスを取り返せる
書き出したファイルをフォルダごと外部HDに保存する
この書き出したファイルを集めたフォルダを、念のため外部のHDにバックアップします。DAW上にあるフォルダも、もう一個コピーして作業を進めるものと分けたほうがいいと思います。なぜかというと、このあとプラグインかけまくりで書き出したトラックがやはり使えなかったとなった時にこの素のままのデータが残っているおかげで、そのトラックに関して、元に戻ることができます。
例えば、ミックスを進めるときに、プラグインエフェクトをかけたトラックを書き出していくとトラック数が増えすぎるので、もとの素の音のトラックは消しながら進めたほうが効率的です。その代わり後戻りはできません。退路を断つというやりかたで、このほうが明らかにはかどります。そして、万が一のときの保険があるとさらに思い切った進め方ができます。
ドラムパートの音作り
素材のバックアップが終わったので、やっと音作りの作業に入ります。最初に取り掛かるのは、人にもよりますがドラムパートである場合が多いです。なぜかというと、ドラムパートが一番多く、トラックを使う事が多いので、曲の印象を左右するということ、あと一番の土台になるバスドラムの音を基準にして音決めをすることが多いためです。
この曲の場合は、生のドラムのマイク録音なので、後の音作りのために、オンマイクで録音しています。そのせいで、オンマイク特有の問題点があるので、それを解消していくように努めます。オンマイクの問題点としては、
- トップマイクに入っている音のバランスが悪い
- ハイハットとシンバルのアタック音が硬い
- スネアの響き線が、張り付いたようになっている
- バスドラの音が低音すぎる
といったことが、聞き返すと音質上の問題となりました。
①のトップマイクについては、マイクとの距離の関係で、シンバル、ハイハット、スネアが大きく、バスドラの音が小さくなってしまいます。このトラックだけ単独で聞くとバスドラが遠くでいい音で鳴っているので、イコライザーで持ち上げ、反対に大きすぎるその他のパートをイコライザーで削ってやります。
②のハイハットとシンバルについては、他の音のカブリを抑えるために、5センチ位のすごくオンマイクで録っています。そのせいで、アタック音がキツイ硬い音になっています。それを解消するために、いくつかの手順を踏んでいます。簡単に紹介すると、
- イコライザーで耳につく音を弱める
- リバーブで硬いアタック音を滲ませる
リバーブを使った音質改善はあまりやる人がいないと思いますが、そのやり方は、高級なほうのリバーブつまり、畳込み演算方式のリバーブ(コンボリューションリバーブ)をつかい、もっとも短いルームなどのプリセットを読み込んで、その距離をさらに短くすることと、ダイレクト音とエフェクト音のバランス、この2つのコントロールで、音質と音の距離感が変わってきます。
③のスネアの響き線ですがオンマイクの録ったままの音は、まるでスネアに張り付いたかのような音になっています。その解消法は、さっきのアタック音のコントロールに使ったやり方がそのまま使えますが、さらに極小のプリディレイをかけるとスネアの上の方の皮に続けてなるようにもなります。
④のバスドラが低音すぎた原因が、フロントヘッドに穴があいていないダブルヘッドのバスドラを使ったがために、高域のアタック音がほとんど録られていないために起こっています。これはイコライザーでアタック音を探しても、ほとんど出てこなかったので、いかんともしがたいです。救いとしては、トップマイクに、バスドラのアタック音が、少し入っているのでそれとミックスするために、無駄な音をイコライザーでカットします。
こうやって、音作りをしたドラムトラックですが、音質の確認と他の音とのバランスを見るために、ハイハットやシンバルを左右に振るなどして、簡易的にステレオに振り分けていきます。他のパートのトラックも、ドラムにあわせて振り分けます。こうして、ドラムの音を修正すると、急にボイスパートの音が抜けてきたような気がします。それでは、今回、ドラムの音作りをして、簡易的にステレオに配置した音源を載せておきます。
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