【作曲入門】①インスピレイション

環境構築

 これから、作曲入門を始めるにあたって、最初に、古くから作曲の原動力になるといわれてきたインスピレイション(ひらめき)について、考えてみます。

インスピレイションとは、

 音楽だけに限らず、芸術作品等の創作に、よく出てくる言葉に、インスピレイションというものがあります。これは、たいていの場合、「本人が予期していないときに、創作のアイデアが自然発生的に浮かんでくる」と言う意味のことをいっていることが多いです。ここには、実は、このインスピレイションが、浮かばせようと努力している時に浮かんでくるのか、あるいは、浮かばせようとしていない、つまり無意識のときに浮かんでくるのか、といった創作の根本にかかわる重要な問題が含んでいるのですが、ここでは、芸術論、創作論を語ろうとしている訳ではなく、どうすれば、楽曲を楽に書けるようになるかを話したいだけなので、この問題は、いったんおいて、進めていきます。

ひらめきを記録する

 もしも、あなたが、曲のメロディーや、歌詞がついたフレーズなどが、よく浮かんでくる体質なら、ICレコーダや、MP3プレーヤなどに、日頃から録音するという習慣を持っているかもしれません。あるいは、たまに浮かんでくるが、面倒なので、特に録音もしないで、忘れるに任せているのかもしれません。どっちがいいか簡単にいうと、何年間かは、浮かんでくるメロディーなどに対して、注意深い時期を持ったほうが良いと思います。そこから得られる一番良い点は、創作に対して、理性的ではない、無意識の領域を動員できるようになると言うことだと思います。最近の脳科学の分野などでよく、潜在意識、右脳などと言われるように、知識、論理、しきたりといったものから、解放された領域を使って、多くの芸術家が創作をしてきたということが、学問的にも証明されてきていると思います。そういったことから、もしあなたが、アイデア、インスピレイションが音楽に限らず、どんなものでも浮かんでいるのだとしたら、それを最大限、生かしていく習慣を作ったほうが良いと思います。インスピレイションが、湯水のように湧き出る時期と言うのは、芸術家の伝記を見れば判るのですが、実はそんなに長くない場合が多いです。それなら、なおさら、アイデアが自然に浮かぶ時期と言うのは、人生の花のようなものなので、浮かんできたものをなるべく、逃さないようにする努力をしたほうが、ものを作る人間として、大きく成長するきっかけになりうると思います。

アフター・ザ・ひらめき・ラッシュ

 ついでといっては、なんですが、インスピレイションが浮かぶ時期をすぎた作家が、どういう後の人生をたどるかということについて、書き加えていきます。それは、だいたい3つのパターンになるのではと思います。それは、

  1. 創作をはなれて、違う人生を生きていく、または、病死する。
  2. インスピレイションを小出しにしながら、創作を続ける。
  3. ひらめき型の作家から、論理的な作家に変わって、創作をする。

 1番目の、創作を離れるひとについて、たしかに芸術家は、一般のひとより、高い割合で若死することが多いです。たとえば、40歳というのが、ひとつのカベのようなもので、そのころに、自ら死を選ぶか、または病死してしまうか、ということが、とくに少し前の時代の芸術家に多いとおもいます。それは、もしかしたら、インスピレイションの枯渇ということと、深くかかわっていた気がします。

 2番目の、インスピレイションを小出しにする人は、創作において重要なものが、インスピレイションから、他のものに移ったということができます。若い頃の創作の原動力が、ほぼインスピレイションイッパツだったのに対して、多少の創作経験によって、作品の構成や、展開のしかたを考えることに、興味が移り、もはや、インスピレイションが創作のすべてではない、と悟った状態といえます。

 3番目の、論理的な作家は、もともとはインスピレイションで創作していたが、それほど、インスピレイションが重要なものとは思っていなかったか、もともと、ひらめきがそれほど、強くなかったので、早いうちから、音楽を論理的に作る力をつけてきた人だと思います。しだいに、編曲家とか、プロデューサーとか、裏方にまわっていくような気がします。

インスピレイションの正体

 これから、インスピレイションの正体について、自分の考え方に、脳科学分野などの研究成果などを加えてまとめていくと、

  1. インスピレイションとは、潜在意識のなかで、生み出される。
  2. インスピレイションとは、右脳がとらえた現実の幻影である。
  3. インスピレイションとは、睡眠、休息によって、形を強化する。

ということになります。つまり、インスピレイションとは、「右脳が現実から直感的に得た印象が、潜在意識の底の潜り、それが睡眠などの時間を経過することにより、拡大強化されて、本人が意識しない瞬間に立ち現れたもの」ということができます。こうしてみると、イメージングや、引き寄せの法則などといったマインドフルネスなどの精神世界と非常に近いところにあることがわかります。もうひとつ踏み込むと、インスピレイションとは、現実の利益とは結びつかないような、つまり芸術の分野にのみ特化して現れるアイデアの引き寄せの法則である、といえるのかもしれません。

インスピレイションを見方にする生き方

 これまで、インスピレイションについて、いろいろと考えてきたので、実際の生活の中で、インスピレイションを得られるような生き方は、どんなものか書いていきます。

自分の感性に正直になる

 よく、本音と建前で生きるという言葉がありますが、これは潜在意識の働きからいっても、インスピレイションを得ることから、非常に遠いとおもいます。たとえば、周りの友人関係などで、EDMが好きだといっていて、そういった手前、無理にEDMを聞いても、いまひとつ好きになれない、じつは聞いていてしっくりくるのは、フォークだった、という場合は、潜在意識が、混乱するだけなので、出るインスピレイションもでなくなってしまうと思います。この場合、潜在意識的にどうすればいいかというと、友人の前で、フォークが好きだと宣言する必要はなく(笑)、無理してEDMを聞くのはやめて、誰もいないところで、フォークを聞いて安らぎをえられればいいと思います。そうすれば、潜在意識が開放されて、インスピレイションがわいてくると思います。そういうことを続ければ、しだいに音楽性も向上して、フォークから離れることもできるかもしれません。(ここで、フォークといっているのは、例としてわかりやすくするためで、フォークが悪いといっているわけではありません)

自分の感覚を否定しない

 もしかしたら、あなたは普通の感覚とは、ずれているといわれることがあるかもしれません。その感覚を、周りに合わせて、抑える必要はないということです。たとえば、あなたの職場で事故があったとして、それにたいして、まわりのひとたちは、事故について涙を流しているとします。ところが、あなたは、手に風が当たる感じが気になってしかたがなく、悲しむような気になれないとします。そのときに、あなたは、人に同情できないことで、自分を恥じることも、改める必要もないということです。自分がそのときに、なにを感じているかということにたいして、意識的になり、それを否定しないからこそ、潜在意識が、はたらきだすのだと思います。

脳に適度な休息をとる

 潜在意識は、ストレスに弱いということは、昔からよく言われていて、創作力はストレスがないときに発揮されやすいともいわれます。もしも、仕事に追われていたら、潜在意識から、インスピレイションが出ていたとしても、それを受け取る余裕がなくなってしまい、潜在意識も、仕事を邪魔してはいけないと思い、もともとあったインスピレイションが、次第に枯れて、創作とは縁遠くなっていくということが、パターンとしてよく聞きます。なるべく、仕事をセーブしたり、ストレスから解放されたほうがいいのですが、そうもいかないと思います。仕事が忙しい状態をどうやって、打開したかという例で思い出すのが、ある小説家の例です。彼は仕事が終わり家に帰ると、そこから意識を離れるために、なるべく早く、寝るそうです。そして、3,4時間寝て、いったん仕事から離れた精神状態で、2,3時間創作に打ち込んで、疲れたら2,3時間、また寝てから、仕事にいくということで、創作をつづけて、ついには、小説家として、生活できるようになったそうです。

 そこまで、できなくとも、創作に行き詰ったら、時間をあける、日を改めるということが、いろんな点で効果があるような気がします。時間をあけると、潜在意識が、自分に代わって答えを出していることが多いような気がします。

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